毎日の生活に大きな影響を及ぼす「尿漏れ」。女性に多いこのトラブルにも解決策はあります。尿漏れのセルフケアの方法をご紹介します。

排尿の仕組みと尿漏れ

尿は腎臓でつくられ、尿管を通って膀胱にたまります。個人差はありますが膀胱に尿が150~200mL溜まると、初発尿意(最初に感じる尿意)が起きます。通常はそれを無意識に我慢して300~400mLの尿が膀胱内に溜まったところで排尿するようにコントロールされています。これが正常な排尿です。
一方、尿漏れは自分でコントロールできずに尿がでてしまう症状のことをいいます。尿漏れの原因にはいくつかの種類がありますが、主なタイプは「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」です。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみをした際や、重いものを持ったときに腹圧がかかり、尿が漏れてしまう症状です。原因は骨盤底(図1)の緩みにあります。骨盤底は妊娠や出産で傷みますが、日常生活に支障の出ないレベルまで徐々に修復されます。しかし、40代以降になって、加齢により筋肉量が落ちたり、閉経を迎えて女性ホルモンが減少したりしてくると、皮下組織のコラーゲンの質が変わり、骨盤底が緩んできます。また、肥満、便秘、喫煙などの生活習慣によっても骨盤底が緩んで尿漏れを起こすことがあります。
ここで、尿漏れ予防に重要な骨盤底筋の状態をチェックしてみましょう。

骨盤底の状態をチェック

いかがでしたか?筋力の低下を感じている方は、図2の骨盤底筋を鍛えるトレーニングをぜひ試してみてください。

図1 骨盤底の位置
図1 骨盤底の位置

骨盤底は恥骨と尾骨の間にある筋肉・靭帯・筋膜・皮下組織等でできたプレート。
骨盤底筋(群)は骨盤底を構成する筋肉です。

図2 骨盤底筋を鍛えるトレーニング(骨盤底筋体操、ピフィラティス)
図2 骨盤底筋を鍛えるトレーニング(骨盤底筋体操、ピフィラティス)
図2 骨盤底筋を鍛えるトレーニング(骨盤底筋体操、ピフィラティス)
図2 骨盤底筋を鍛えるトレーニング(骨盤底筋体操、ピフィラティス)

切迫性尿失禁

急にトイレに行きたいほどの強い尿意が起こって(過活動膀胱)、我慢できずに尿が漏れてしまう症状です。これには脳や脊髄の障害が原因の神経因性過活動膀胱と、神経系に明らかな異常が認められない非神経因性過活動膀胱があります。
いずれの原因でも、対策の一つに「膀胱訓練法」があります。在宅時はトイレに行きたいほどの強い尿意が急にきても少し我慢し、排尿の間隔を少しずつあけて、膀胱に尿をためられるように訓練してください。なお、外出時は尿意を我慢しないでトイレに行くようにしましょう。まずはご自身の不安を取り除くことが大切です。

生活習慣の見直しで症状改善

飲み物を摂る量は、多すぎても少なすぎてもよくありません。春は1日に1.5L、夏は2L、秋は1.5L、冬は1Lを目安に摂るようにしましょう。飲み物のうち、コーヒーや紅茶などのカフェインが含まれているもの、炭酸飲料、柑橘類のジュースなどは、膀胱を刺激しやすいため控えましょう。また、正常な排尿には、骨盤底筋をつくる良質なたんぱく質(肉や魚)を含んだ食事が大切です。加えて、腸内環境を整えて正常な排便を心掛けましょう。
その他、夏の冷房や冬の寒さなどによる体の冷えは頻尿を助長することがあります。温かいものを摂って体を温める、マフラーなどで首元を冷やさないようにするなど、体を保温しましょう。

先生イラスト
尿漏れは年に3~4回程度であれば、正常の範囲内です。また日常生活の質が低下したり、困ったりしていなければ問題ないでしょう。しかし、尿漏れが1週間に1回以上起こり、尿漏れの量が多いと感じるときは注意が必要です。例えば下着だけではなくズボンやスカートまで濡れる場合は重症の可能性があります。このような時は放置せず、泌尿器科や婦人科を受診してください。
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