腸や腸内細菌は、肥満や老化など、さまざまな病気と深く関係しています。 腸内環境を整えることは健康長寿への第一歩です。

腸を病気の発生源から健康の発信源に

腸は十二指腸から肛門までを指し、小腸と大腸に大別できます(下図参照)。小腸は食物成分を消化・吸収する役割を担っており病気にかかりにくい臓器です。一方、大腸はよく耳にする病気だけでも、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群などが挙げられ、病気の種類が多い臓器です。その理由は、大腸に棲んでいる腸内細菌が影響を及ぼしているからです。有害な物質を作り出す悪玉菌は小腸から送り込まれた食べカスを大腸内で腐敗させ、硫化水素やアンモニアなどをつくり出し、前述の大腸の病気を発症させます。また、脳機能の低下や肌荒れなどにも関与するといわれています。
腸にはこの他、体に有益な物質をつくり出す善玉菌や、未解明な腸内細菌を含む日和見菌が多数存在しています。日和見菌は腸内で善玉菌と悪玉菌の多い方の影響を受けます。腸内環境を整えるには、善玉菌を増やすとともに日和見菌の働きを活性化させることが重要です。それにより、大腸を病気の発生源から健康の発信源に変えることができるのです。

図)小腸と大腸の構造
小腸と大腸の構造図

●小腸:十二指腸+空腸+回腸(約6〜7メートル)
●大腸:盲腸+結腸(上行・横行・下行・S状)+直腸(約1.5メートル)

腸内細菌と長寿の関係

これまでの研究によって腸内細菌は加齢により変化することが知られています。
元気な高齢者の腸内細菌を解析したところ、善玉菌の一種であるビフィズス菌や酪酸産生菌の数が多いことが分かりました。ビフィズス菌は酢酸や乳酸を、酪酸産生菌は酪酸を産生します。酢酸は腸を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑制します。また、酪酸は腸の粘膜を修復することで全身の免疫力を正常化するとともに、がん細胞を抑制する効果があります。これらビフィズス菌や酪酸産生菌を総称して「長寿菌」と定義付けされました。この長寿菌が多いと健康長寿につながるのではないかと注目されています。

あなたの腸年齢をチェック!

チェックした数が多い方は腸内環境が悪くなっている可能性があります。
食べ物や運動を見直して、今日から腸内環境を整えましょう!

生活習慣について チェック表
食事に関して チェック表
お通じに関して チェック表
結果

腸内環境を整えて健康を手に入れよう!

腸内環境を改善するカギは、毎日を快便で過ごすことです。そのためには便を「つくる」「育てる」「出す」の3つの力がポイントです。

1. 便をつくる力~お通じを"つくる"食材をしっかり食べよう~

食事をするときは食物繊維が豊富な食材を積極的に摂りましょう。食物繊維は小腸で消化されず、大腸にそのまま届き、大腸内の有害物質を早く体外に排泄する働きがあります。
高齢になると食が細くなりがちですが、排泄を促すためにはなんでもよく食べることが大切です。野菜は、1日当たり350gを目標に摂りましょう。蒸したり、煮たりすることでかさが減り、たくさん摂ることができるのでおすすめです。
※「21世紀における国民健康づくり運動:健康日本21」(厚生労働省)より

食物繊維の種類

  • 不溶性食物繊維(ごぼう、たけのこなどの根菜類、さつまいも、こんにゃくなどの芋類)
    便のかさを増やして便通を促す。たっぷりの水分と一緒に摂るのがポイントです。
  • 水溶性食物繊維(ひじき、わかめなどの海藻類や納豆などの豆類)
    腸内の不要物を排除する。善玉菌のエサにもなります。

2. 便を育てる力~加齢とともに減少する善玉菌を腸に届けよう~

便を育てるためには、長寿菌が優勢な腸内環境を維持することが重要です。日頃から乳酸菌やビフィズス菌入りのヨーグルトや飲料、酪酸産生菌が活躍できる食物繊維が豊富な食材(きのこ類・海藻類・豆類など)を摂るとよいでしょう。食事から摂りにくい場合は、乳酸菌などを含むサプリメントなどで補う方法もあります。

3. 便を出す力~毎日の運動で便を押し出す力をつけよう~

便を押し出すためには、腸腰筋と呼ばれる筋肉の働きが重要です。腸腰筋が弱っていると便秘の原因にもなるので腸腰筋トレーニングをして鍛えましょう(下図参照)。
ウォーキング(目標は1日9,000~10,000歩)、屈伸運動、もも上げ運動なども有効です。体調と相談しながら無理のない範囲でおこないましょう。

腸腰筋トレーニング

腸骨筋図

大腰筋、腰骨筋をあわせて腸腰筋と呼びます。
これをしっかり鍛えて便を押し出す力をつけま
しょう♪

  1. 2秒かけて息を吐きながら右ひざを上げ、両手でひざをタッチ。
  2. 2秒かけて息を吸いながら元に戻す。姿勢を意識しておこなう。
  3. 反対も同様に。
  4. 1〜3を左右それぞれの足で交互に2回ずつおこなう。
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ご自身の体調にあわせて無理のない範囲でおこなってください。

生体をリラックスさせる腸内細菌

辨野 義己(べんの よしみ)先生

最近になって生体をリラックスさせる働きのある有用細菌(サイコバイオティクス)が発見され、この働きを利用して、うつ病や不安障害などを治療するという研究も進められています。このような意味でも体に有用な腸内細菌を増やし、腸内環境を整えることは重要なのです。