健康寿命を延ばすためには筋力の維持が非常に重要です。無理なくできて筋力の維持に役立つ『安全筋トレ』をご紹介します。

転倒による骨折に要注意

男女ともに世界トップクラスの平均寿命を誇る日本。平均寿命が延びている一方で、健康寿命との差を縮めることが超高齢社会の課題となっています。高齢者の健康寿命を脅かす原因の一つに転倒による骨折があります。骨の形成力が衰えがちな高齢者は、たった一度の転倒が寝たきりにつながってしまうことも珍しくありません。
転倒のリスクを減らすために必要なのが「ふらつかずにまっすぐ歩くための筋力」を維持することです。今回ご紹介する『安全筋トレ』は、筋力の低下を防いで、転倒のリスクを減らすことに役立ちます。
※健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間

安全筋トレで転倒予防

安全筋トレの特長は次の2つです。
1つ目は「体に負担をかけすぎないこと」です。普段あまり運動をしていない方は、筋力や体力が衰えている可能性があります。そのような方が、いきなり負荷の強い運動を行うとけがをするリスクが高くなってしまいます。安全筋トレは筋力や体力が衰えた方でも無理なく続けられる程度の負荷をかけるトレーニングです。この無理のない負荷によって効率的に筋力維持ができます。
2つ目は「家の中でできること」です。普段家の中で過ごすことが多い方が、突然違う環境に出ると思わぬけがをしてしまうことも少なくありません。安全筋トレはスポーツジムのように特殊な器具を使わなくても、家の中でできるトレーニングです。
以下に安全筋トレをご紹介します。ぜひ、行ってみましょう。

足先ふみふみ

すねと臀部(お尻)の筋肉を鍛える
すねを鍛えることで歩行時のつまずきやふらつきを減らすことができます。

  1. 段差や傾きがなく、安定した場所を選んでゆっくりと横になり、肘をついて体を支えます。
  2. 片足をゆっくりと、無理のない範囲で上げ、まっすぐつま先を伸ばします。
  3. まっすぐに伸ばしたら、写真のように足首を曲げ手前に引いてください。その後、つま先は力を抜いて楽にします。
  4. 上げていた足をゆっくりと下ろします。
  5. ②~④の一連の動きを10回を目安に行いましょう。もう片方の足も同様に行いましょう。

筋肉が弱い方や体力に自信のない方は、まずは横になり、足を少し引き上げるところから始めましょう。足先を伸ばしてから引く動作もきつく感じるようであれば休憩しながら、少しずつ回数を増やしていきましょう。

  • 10回を楽にできるようになってきたら徐々に回数を増やし無理のない範囲で、
    両足それぞれ30回を目指しましょう。

座布団飛行機

腰背部の筋肉を鍛える
腰背部を鍛えることで、姿勢がよくなり腰痛予防になります。

  1. 段差や傾きがなく、安定した場所を選びます。
  2. 床からの高さが10センチくらいになるように、座布団やクッションなど弾力性のあるものを敷きます。敷いたクッションや座布団がお腹の下になるようにうつ伏せで寝ます。
    ※座布団、クッション以外にもタオルやタオルケットなどを折りたたんだものでも代用できます。
  3. 写真のように、両腕、両足、背中のラインが水平になるように一直線に伸ばしてください。
  4. この状態を「5秒間キープして下ろす」で1回です。(まずは5回を目安に始めてください。)
  5. 慣れてきたら時間を徐々に増やしていきましょう。

【注意】 手と足をあげすぎて反り返らないように
気をつけてください。
反ることで背筋を痛める原因と
なりますので注意しましょう。

  • 時間を延ばしても楽にできるようになってきたら、つま先を床につけておこなってみましょう。
    上半身に集中して負荷をかけることができます。

イスに座って立って

下肢と臀部(お尻)の筋肉を鍛える
太ももの内側を鍛えることで、下半身の筋力低下防止やつまずき、O脚の予防にもなります。

  1. 段差や傾きがなく、安定した場所に椅子を置きます。
  2. つま先を少し外側に向け、肩幅くらいに開きます。腕は前で組み、まっすぐ前を向いて立ちます。目線は下げず、お尻を後ろに突き出すようにゆっくりと椅子に座ります。猫背にならないように注意してください。
  3. イスに座ったらゆっくりと立ち上がります。この動作をまずは10回を目指して行いましょう。

【注意】 立ち上がるときに膝がつま先よりも前に出ると、
ひざへ負担がかかり、ひざ痛の原因となるので
注意してください

  • 脚をがに股にすると太ももの内側が鍛えられ、O脚予防になります。
    また、楽にできるようになってきたら椅子に座る際に、お尻をつけず中腰で行ってみましょう。

ゆっくり寝るだけ腹筋

腹筋を鍛える
腹筋を鍛えることで、姿勢の改善や腰痛予防になります。

  1. 段差や傾きがなく、安定した場所を選び、座ります。ひざを曲げ、腕を胸の前で交差します。
  2. 5秒くらいかけてゆっくりと体を倒していき、床に背中をつけます。頭を打つと危険なので、後頭部の位置に枕やクッションなどをおいておきましょう。
    ポイントはゆっくりと寝ることです。腹部に負担をかけ腹筋を鍛えることができます。
  3. 体を倒した状態から、横を向き、体を手で支えてゆっくり起き上がります。
  4. ①から③の動作を最初は5回を目安に始めましょう。
  • 楽にできるようになってきたら
    10回まで増やしていきましょう。

転倒時に体を守る受け身が大切

転ばないようどんなに気をつけていても、転んでしまう場合があります。その時のために、体を支えられるようにしておきましょう。次に体を支える上で重要な腕の筋肉を鍛えるトレーニングをご紹介します。

ペットボトルをクイックイ

前腕の筋肉を鍛える
前腕の筋肉を鍛えることで、転んだ時に体を支えることができます。

  1. ソファーやベッドなどに横になった状態で水の入ったペットボトルを持ちます。腕と手の甲がまっすぐ一直線になるようにします。
  2. 腕はキープしたまま、手首だけを上下に曲げるように動かします。これを10回行いましょう。これで1セットです。
  3. まずは1セットから始めましょう。反対の腕でも同様に行ってください。
  • 楽にできるようになってきたら
    それぞれの腕で3セット(30回)まで
    増やしていきましょう。

壁腕立て伏せ

上腕の筋肉を鍛える
前腕の筋肉と同様、上腕を鍛えることで、転んだ時に体を支えることができます。

  1. 壁から少し離れて立ち、手をつきます。
  2. 脚は肩幅ぐらいに開き、体をゆっくりと前に倒して、元に戻す。
  3. これを1回として10回を1セットとします。

【注意】 体を倒すときに腰が反ってしまうと腰痛の原因になるので、
背中からかかとにかけて一直線になるように意識してください。

  • 楽にできるようになってきたら
    3セット(30回)まで
    増やしていきましょう。
先生イラスト

『安全筋トレ』は、続けることで効果が期待できます。
無理のない範囲で行うことが大切です。
秒数と回数は目安なのでご自身の体力と
体調に合わせて取り組んでください。

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