普段の生活のなかで、人は多かれ少なかれストレスを感じているものです。しかし、ストレスをうまく発散できないままためこんでしまうと、心にも体にも、そして行動にもさまざまな不調があらわれます。
ストレスを感じやすい場面やストレスが心身・行動に与える影響について解説します。

ストレスとは?感じやすいのはどんな場面?

ストレスにはさまざまな種類があり、反応も人により異なります。しかし、ストレスを感じやすい場面やきっかけには、ある程度共通性があるようです。

そもそもストレスとは?

「ストレス」はもともと物理学の用語で、「外部からの刺激に対する応力」のことです。 医学や心理学の分野では、外部からの刺激などに対する心や体の反応を「ストレス反応」、ストレスの原因となっている刺激を「ストレッサー」と呼びます。
そして、「ストレス反応」と「ストレッサー」を合わせて「ストレス」と表現するのが一般的です。
ストレスに対する反応は、性格や考え方、周囲の環境などによって変わります。 また、ストレスの原因が同じでも、それが適度に緊張を保てる「良いストレス」になるか、心身に悪影響をおよぼす「悪いストレス」になるか、あるいはストレスをどれくらい強く感じるかは人それぞれです。
ストレスの対処がうまくできないと、心や体、行動にまで悪影響がおよびます。そのため、早い段階でストレスに気付き、適切な対応をとることが非常に大切です。

ストレスを引き起こすストレッサーは1つではない

ストレスの原因となる「ストレッサー」にはいくつか種類があります。心や体へ影響をおよぼす代表的なストレッサーは、「物理的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「心理・社会的ストレッサー」などで、例としては下記のような内容が挙げられます。

  • 物理的ストレッサー
    自動車や電車などの騒音や振動、人の多い場所、気象変化にともなう寒暖差や気圧の変化など
  • 化学的ストレッサー
    公害物質・たばこなどによる空気の汚染や悪臭、酸素の欠乏や過剰、薬物や花粉など
  • 心理・社会的ストレッサー
    人間関係や仕事上のトラブル、家庭の問題など

そして、一般的に「ストレス」という場合、多くは「心理・社会的ストレッサー」を意味します。

ストレスを感じやすい場面

それでは、人はどのような場面でストレスを感じやすいのでしょうか。
「国民生活基礎調査※1」によると、12歳以上の国民の約半数が日常生活で何らかの悩みやストレスを抱えていることが明らかになっています。悩みやストレスの原因として上位を占めているのは、人間関係・病気や介護・収入や家計・仕事に関することなどです。
また、「労働安全衛生調査※2」では、30~50歳代の過半数が仕事や職業生活に対して強いストレスを抱えているという結果が示されています。ストレスの内容として挙がっているのは、仕事の量や質・対人関係・仕事の失敗や責任の発生・会社の将来性などです。
※1 e-Stat 令和元年 国民生活基礎調査 健康 全国編
※2 厚生労働省 令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)

こんなことがストレスのきっかけに・・・

日常生活で経験したある出来事がきっかけで、ストレスによる不調があらわれることも稀ではありません。ストレスのきっかけとなりやすい例をいくつか挙げますので、心あたりがある場合は早めに心身のリフレッシュを心がけましょう。

ストレスのきっかけとなりやすい身のまわりの出来事

  • 子どもの進学や夫婦不和・親子不和など、家庭内の人間関係の変化や悪化
  • 自分自身や家族、身近な人のケガや病気、災害などの体験
  • 収入の減少、ローンや借金、投資の失敗などの金銭問題
  • 引越しや自宅の改築、周囲の騒音など住環境の変化

など

ストレスのきっかけとなりやすい仕事や職場での出来事

  • 仕事の量・質の変化、勤務する時間の長さや日勤・夜勤シフトの変更
  • セクハラ・パワハラを含む職場での対人関係トラブル
  • 仕事でのミスや失敗に対する責任問題
  • 配置転換や転勤、役割や身分の変化

など

心身のエネルギー状態をチェック!

心身のエネルギーの消耗に気づかず頑張り続けていると、心は次の段階を踏んで疲弊していきます。

  1. 張り切りすぎ、頑張りすぎ ⇒「過剰適応段階」
  2. イライラし、顔つきや態度、睡眠などに変化が生じる ⇒「神経過敏段階
    ※神経過敏チェックリスト参照
  3. 倦怠感がひどく体調が悪化。表情もどんより ⇒「無関心段階」
  4. 何もかも面倒くさくなり、人との接触も避ける ⇒「引きこもり段階」
  5. 気力低下がひどく一日中憂鬱。楽しみがなくなる ⇒「抑うつ段階」
  6. 死んでしまいたい願望が生じる ⇒「重症化段階」
神経過敏チェックリスト

直感的にチェック!心の充電池

心の疲弊を防ぐために、毎日、自分の心と向き合ってエネルギーの状態をチェックしましょう。下図を参考に、自分の心を充電池に見立てて考えるとケアしやすくなります。

心の充電池

ストレスが心身に与える影響

ストレスを感じると心や体にはどのような変化があらわれるのでしょうか。
ストレスの反応を、心・体・行動に分けて見ていきましょう。

心にあらわれるストレス反応

ストレスをうまくコントロールできないと、イライラや不安感が増したりすることがあります。気分のひどい落ち込みや興味・関心の低下、不安や錯乱状態をまねく場合もあります。

体にあらわれるストレス反応

体にあらわれるストレス反応としては、関節痛や腰痛、頭痛、肩こりなど体の痛みをともなう症状のほか、胃の痛みや食欲低下、便秘や下痢などの消化器症状があります。目の疲れや動悸・息切れなどがストレス反応としてあらわれる場合もあります。
また、ストレスとの関連が指摘されている病気も少なくありません。
代表的な病気は、消化性潰瘍と過敏性腸症候群です。気管支喘息、過換気症候群、高血圧、糖尿病、筋収縮性頭痛、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、夜尿症、メニエール病、顎関節症などもストレスと関係している場合があります。
これらの病気はストレス以外の原因でも発症します。とはいえ、ストレスで症状が悪化するリスクはあるため、ストレスをためないようにすることはとても重要です。

行動にあらわれるストレス反応

行動面にあらわれるストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、過食、仕事でのミスや失敗、重大な事故や災害につながるおそれのあるヒヤリハットの増加などがあります。
ストレスが続くと、行動にあらわれるストレス反応(過食、飲酒量や喫煙量の増加など)と体にあらわれるストレス反応(高血圧、糖尿病など)が相まって、脳卒中や虚血性心疾患など重篤な疾患をまねくことにもなりかねません。
命と体を守るためにも、ストレスに気が付いたらこまめに発散するようにしましょう。

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