花粉症は、アレルギー疾患の一つ。その原因の大半を占めるスギ花粉は、戦後から増え始めたといわれています。つらい症状を少しでも軽減できるように、花粉症対策のポイントや治療法をご紹介します。

免疫反応と花粉症

私たちの体内では、ウイルスなどの有害な異物(抗原)が侵入すると、それに対抗する抗体がつくられ、異物を排除しようとします。これが異物から体を守る免疫反応です。
花粉症はアレルギー疾患の一つで、体に入った無害な花粉を誤って有害な異物と認識して抗体をつくり、花粉を排除しようとさまざまな反応が起こります。
春先の花粉症の原因はスギ花粉が大半を占め、花粉が付着する部位によってさまざまな症状を引き起こします(表参照)。

付着部位 鼻の粘膜 気道 目の粘膜 皮膚
症状 くしゃみ 喘息 結膜炎 皮膚炎
鼻水 アレルギー性
気管支炎
目のかゆみ

花粉症患者が増えた原因は?

スギ花粉イラスト

戦前は花粉症が現在のように大きな問題となることはありませんでした。戦後に花粉症患者が増えたのは、建築資材に用いるスギを大量に植林した結果、スギ花粉の飛散量が増加したためと言われています。
スギ花粉は土の上などの湿った場所に落ちた場合はすぐに不活性化します。しかし、アスファルトの上や乾燥した室内環境では、生命力が強く、数か月にわたり活性を維持している可能性があります。飛散情報をこまめにチェックし、花粉対策を長めに続けるなどの注意が必要です。
また、和食中心の食事から近年は洋食中心となり、さらに添加物や加工された油を使った食事が多くなってきたため、これにより免疫システムが乱れ、花粉症患者が増えたとも考えられています。

花粉症対策のポイントは?

花粉症対策で大切なことは、花粉を浴びる量を減らすことと、家の中に花粉を持ち込まないことです。外出時の服装はウールなどの花粉が付きやすいコートは避け、表面がツルツルして花粉が付着してもすぐに落ちやすい素材がオススメです。衣類についた花粉は玄関先で払い落とす習慣をつけ、コートなどは玄関に吊るし、花粉を部屋に持ち込まないようにしましょう。また、花粉の飛散時期は窓を開けっ放しにせず、換気は必要最小限にとどめましょう。布団などを外に干す場合も注意が必要です。
花粉対策にメガネやマスクも有効です。コンタクトレンズを使用する人の中には、花粉で起こる目のかゆみよりも、結膜炎の症状が目立ちます。可能であれば、花粉の時期だけでもコンタクトからメガネに代えるとよいでしょう。また、マスクは花粉を吸い込む量を減らすだけではなく、気道をうるおすことにより気道や口腔の粘膜の防御力を高めます。
そして、室内は清潔に保ち、空気清浄機を使う場合はリビングと寝室で使用することが理想的です。1か所だけならば寝室、特に枕元に置くと花粉症の症状緩和に有効です。

気をつけるべき生活習慣

花粉によるアレルギー症状は、粘膜の状態と深く関わっています。粘膜を荒らさないことが体の防御力を高め、花粉症の軽減につながります。花粉症の悪化を防ぐには、バランスのよい食事を心がけ、お菓子類はなるべく控えたほうがよいでしょう。下図に花粉症を軽減させるための食事の注意点を示したので参考にしてください。
また、運動不足やストレスも花粉症を悪化させます。運動不足の改善には屋内でできる有酸素運動を週1回ほど無理のない範囲で取り入れるのが理想です。加えて早寝早起きをして生活リズムを乱さないことも重要です。

屋内でできる水泳や、ストレス解消を兼ねてヨガがオススメです。
花粉症悪化防止のため守っていただきたい食事の注意点
心がけるポイント

花粉症治療

スギ花粉症の治療法の一つに「アレルゲン免疫療法」があります。これはアレルゲン(花粉など)を少量から投与し、体をアレルゲンに慣れさせることでアレルギー症状を和らげるなどの効果が期待できます。アレルゲン免疫療法は皮下に注射する「皮下免疫療法」だけでしたが、最近では舌の下に治療薬を滴下する「舌下免疫療法」も行われています。この治療法は注射の痛みや、通院などの負担も軽減できます。しかし、舌下免疫療法は花粉症の症状が治まってからでないと治療を開始できない、即ちスギ花粉のシーズン中には開始できないことや、花粉症の症状がない時を含めて3年程度継続する必要があるなどの注意点があります。詳しくは舌下免疫療法を行っている医療機関にご相談ください。

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