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ストレス研究室

手軽にできるストレス発散法9選
ストレスを感じる原因とは?

仕事や人間関係、家事、育児など、日々の生活で何かしらストレスを抱えている人は多いはず。
ただ、過度なストレスは心身に不調をもたらすばかりか、病気の原因になる場合もあるので注意が必要です。
心も体も健康に過ごすために、ストレスを上手に発散する方法を知っておきましょう。

奥田弘美先生

監修:奥田弘美先生
精神科医(精神保健指定医)、産業医(労働衛生コンサルタント)、株式会社朗らかLabo 代表取締役

普段の生活のなかで、人は多かれ少なかれストレスを感じているものです。しかし、ストレスをうまく発散できないままためこんでしまうと、心にも体にも、そして行動にもさまざまな不調があらわれます。
では、ストレスを発散して心身ともに健康に過ごすためには、どうすればよいのでしょうか。

この記事では、ストレスを感じやすい場面やストレスが心身・行動に与える影響、オフィスでも気軽に取り組めるストレスの発散法などを紹介します。ついやってしまいがちな「誤ったストレス解消法」も紹介しますので、ストレスで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

ストレスとは?感じやすいのはどんな場面?

ストレスにはさまざまな種類があり、反応も人により異なります。しかし、ストレスを感じやすい場面やきっかけには、ある程度共通性があるようです。

そもそもストレスとは?

「ストレス」はもともと物理学の用語で、「外部からの刺激に対する応力」のことです。 医学や心理学の分野では、外部からの刺激などに対する心や体の反応を「ストレス反応」、ストレスの原因となっている刺激を「ストレッサー」と呼びます。
そして、「ストレス反応」と「ストレッサー」を合わせて「ストレス」と表現するのが一般的です。

ストレスに対する反応は、性格や考え方、周囲の環境などによって変わります。 また、ストレスの原因が同じでも、それが適度に緊張を保てる「良いストレス」になるか、心身に悪影響をおよぼす「悪いストレス」になるか、あるいはストレスをどれくらい強く感じるかは人それぞれです。

ストレスの対処がうまくできないと、心や体、行動にまで悪影響がおよびます。そのため、早い段階でストレスに気付き、適切な対応をとることが非常に大切です。

ストレスを引き起こすストレッサーは1つではない

ストレスの原因となる「ストレッサー」にはいくつか種類があります。心や体へ影響をおよぼす代表的なストレッサーは、「物理的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「心理・社会的ストレッサー」などで、例としては下記のような内容が挙げられます。

  • 物理的ストレッサー

    自動車や電車などの騒音や振動、人の多い場所、気象変化にともなう寒暖差や気圧の変化など

  • 化学的ストレッサー

    公害物質・たばこなどによる空気の汚染や悪臭、酸素の欠乏や過剰、薬物や花粉など

  • 心理・社会的ストレッサー

    人間関係や仕事上のトラブル、家庭の問題など

そして、一般的に「ストレス」という場合、多くは「心理・社会的ストレッサー」を意味します。

ストレスを感じやすい場面

それでは、人はどのような場面でストレスを感じやすいのでしょうか。

「国民生活基礎調査※1」によると、12歳以上の国民の約半数が日常生活で何らかの悩みやストレスを抱えていることが明らかになっています。悩みやストレスの原因として上位を占めているのは、人間関係・病気や介護・収入や家計・仕事に関することなどです。

また、「労働安全衛生調査※2」では、30~50歳代の過半数が仕事や職業生活に対して強いストレスを抱えているという結果が示されています。ストレスの内容として挙がっているのは、仕事の量や質・対人関係・仕事の失敗や責任の発生・会社の将来性などです。

※1 e-Stat 令和元年 国民生活基礎調査 健康 全国編
※2 厚生労働省 令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)

こんなことがストレスのきっかけに……

日常生活で経験したある出来事がきっかけで、ストレスによる不調があらわれることも稀ではありません。ストレスのきっかけとなりやすい例をいくつか挙げますので、心あたりがある場合は早めに心身のリフレッシュを心がけましょう。

ストレスのきっかけとなりやすい身のまわりの出来事
  • 子どもの進学や夫婦不和・親子不和など、家庭内の人間関係の変化や悪化
  • 自分自身や家族、身近な人のケガや病気、災害などの体験
  • 収入の減少、ローンや借金、投資の失敗などの金銭問題
  • 引越しや自宅の改築、周囲の騒音など住環境の変化

など

ストレスのきっかけとなりやすい仕事や職場での出来事
  • 仕事の量・質の変化、勤務する時間の長さや日勤・夜勤シフトの変更
  • セクハラ・パワハラを含む職場での対人関係トラブル
  • 仕事でのミスや失敗に対する責任問題
  • 配置転換や転勤、役割や身分の変化

など

ストレスが心身に与える影響

ストレスを感じると心や体にはどのような変化があらわれるのでしょうか。
ストレスの反応を、心・体・行動に分けて見ていきましょう。

心にあらわれるストレス反応

ストレスをうまくコントロールできないと、イライラや不安感が増したりすることがあります。気分のひどい落ち込みや興味・関心の低下、不安や錯乱状態をまねく場合もあります。

体にあらわれるストレス反応

体にあらわれるストレス反応としては、関節痛や腰痛、頭痛、肩こりなど体の痛みをともなう症状のほか、胃の痛みや食欲低下、便秘や下痢などの消化器症状があります。目の疲れや動悸・息切れなどがストレス反応としてあらわれる場合もあります。

また、ストレスとの関連が指摘されている病気も少なくありません。
代表的な病気は、消化性潰瘍と過敏性腸症候群です。気管支喘息、過換気症候群、高血圧、糖尿病、筋収縮性頭痛、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、夜尿症、メニエール病、顎関節症などもストレスと関係している場合があります。

これらの病気はストレス以外の原因でも発症します。とはいえ、ストレスで症状が悪化するリスクはあるため、ストレスをためないようにすることはとても重要です。

行動にあらわれるストレス反応

行動面にあらわれるストレス反応には、飲酒量や喫煙量の増加、過食、仕事でのミスや失敗、重大な事故や災害につながるおそれのあるヒヤリハットの増加などがあります。

ストレスが続くと、行動にあらわれるストレス反応(過食、飲酒量や喫煙量の増加など)と体にあらわれるストレス反応(高血圧、糖尿病など)が相まって、脳卒中や虚血性心疾患など重篤な疾患をまねくことにもなりかねません。

命と体を守るためにも、ストレスに気が付いたらこまめに発散するようにしましょう。

オフィスでもできる!ストレスを発散するお手軽セルフケア5選

ここからは、ストレス発散に役立つセルフケアをいくつか紹介します。
まず、オフィスでも実践できる手軽なストレス発散法5選です。

  1. 1.その場でストレッチしたり、歩いてみる

    デスクワークでは同じ姿勢で長時間過ごすことが多いため、体のコリに悩まされている方も多いでしょう。特に、仕事量が多い・人間関係がうまくいっていないなどのストレスがあると、筋肉が緊張してますますコリがひどくなります。
    このような場合は、1時間に数分で良いので体の関節や筋肉をストレッチして伸ばしたり、歩いたりすることで、脳や体の血流を増やしてリラックスさせる効果があり、ストレスの軽減につながります。

    椅子に座ったまま軽く伸びをしたり腕をぐるぐる回したりすることで、体はほぐれてきます。手を伸ばすのがはばかられる場合は、体を後方に軽くひねる・肩や首をゆっくり回すだけでも構いません。
    また座りっぱなしだと全身の血流が悪くなってしまうため、席を立ってトイレに行きがてら廊下を歩いたり、階段を上り下りするのも効果的です。

  2. 2.深呼吸をする

    不安や緊張が高まると、気が付かないうちに呼吸が浅くなってきます。
    ストレスを感じるときや呼吸が浅くなっていることに気付いたときは、意識して深呼吸をしてみましょう。
    深呼吸をすると、交感神経の興奮が抑えられて副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。

    深呼吸のやり方は簡単です。
    背筋を軽く伸ばしたら軽く目を閉じ、お腹に手を当ててゆっくりと口から息を吐いてください。息を十分に吐き出したら、今度は鼻からたっぷり息を吸いこみましょう。これを何回か繰り返すと、だんだん気持ちが和らいできます。

    なお、息を吐くときはお腹をへこませることを意識し、息を吸うときはお腹をふくらませるようにしましょう。このようにお腹を使う腹式呼吸をすると、より深く呼吸できます。

  3. 3.甘いものを少しだけ口にする

    「ストレスがたまるときは甘いものを口にすると良い」という話を聞いたことがありませんか。
    実は、ストレス時に甘いものなどの糖質を適量摂ることは、科学的にも正しいと考えられています。

    「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、心の安定や安心感をもたらす神経伝達物質です。このセロトニンの合成には、血糖値が上昇したときに分泌される「インスリン」が重要な役割を果たします。というのは、セロトニンの原料となる「トリプトファン」は、インスリンにより脳内に運ばれるからです。
    つまり、甘いものや炭水化物などの糖質を食べて血糖値が上がるとインスリンの分泌がうながされ、脳内に運ばれるトリプトファンの量が増えます。すると、セロトニンの合成が高まるため、ストレス軽減効果が期待できるとされています。

    また、糖質から作られるブドウ糖は、脳のエネルギー源となる重要な成分です。勉強や仕事で脳が疲労して集中力や判断力が鈍っているときに甘いものを食べると、脳をリフレッシュする効果が期待できます。

    しかし甘いものを食べすぎると、血糖値が急上昇したあと急下降するため、結局はストレスが倍増してしまいます。
    甘いものを多量に食べることで血糖値が上がると、一瞬はストレスが軽減して心地よく感じますが、そのあと血糖値が急激に下がるときに体に倦怠感が出たり、精神的にも不快な気分が誘発されてしまいます。
    もちろん甘いものの食べ過ぎは、糖尿病や脂質代謝異常症の原因となりますので健康にもよくありません。

    そのため仕事や勉強でストレスを感じたら、甘いものを少量だけ食べるのは良いのですが、スウィーツをドカ食いしてストレス発散するということは絶対にやめてください。
    ちなみに成人のおやつの適量は、120カロリーから200カロリー程度といわれています。
    アーモンドチョコならば4~5粒程度、小さめのプリンなら1個、ショートケーキなら半分程度となります。
    くれぐれも食べ過ぎないようにして、甘いものと上手につきあって、気分転換に活用してください。

  4. 4.よく噛んで食べる

    ストレスを感じたときに、ガムやグミなどの噛み応えのあるものを口にするのも手軽なストレス発散方法です。

    ウォーキングやスクワットなど一定のリズムで繰り返し行なう運動(リズム運動)には、セロトニンの分泌をうながす作用があります。そして物を食べる際の咀嚼運動にも、同様の作用があることがわかっています。

    セロトニンの分泌が高まるのは、リズム運動を始めて5分程度経ってからです。セロトニン濃度がピークに達するまでには20~30分ほどかかるため、ガムなどを口にする際は時間を意識してよく噛むようにするとよいでしょう。普段の食事に、歯ごたえのある食材を取り入れるのもおすすめです。

    さらに、ストレスのある状態で咀嚼運動をすると、「不快」に関する情報が脳に送られにくくなり、アドレナリンなどのストレス関連物質の量が低下することも明らかになっています。

    よく噛むと、脳の血流量が増えて集中力がアップし、記憶に関与する「海馬」の活性化にもつながるため、ストレス解消と同時に仕事の効率アップにもつながるでしょう。

  5. 5.気分転換できるグッズを上手に使う

    「デスクで煮詰まったときに、こっそりストレスを発散したい」という場合には、自分好みの気軽に気分を転換できるグッズを活用してみましょう。
    仕事とはまったく関係がなくて、自分にとって心地よいことや楽しい作業をすると、緊張や興奮が抑えられて、気持ちをすっきり切り替えることができます。

    たとえば手のひらサイズのストレス解消グッズなどで、触り心地が良く、思わず何度も握りしめてしまう人気のおもちゃ、エアパッキンの気泡をつぶすような感覚が楽しめるグッズ、ボタンを連打できるスイッチ付きのキーホルダーなどは、触っているだけで無心になれます。こうしたグッズが好きな方は、ぜひ活用してみてください。

    また自分の愛している家族やペットたち、友達たちとの楽しい写真や動画をスマホなどで短時間見るのも良い気分転換になるでしょう。
    自分の好きな音楽を1曲だけ聞いてみるというのもお勧めです。

ちょっと時間があるときに!おすすめのストレスケア4選

次は、いつもより少し時間があるときにおすすめのストレス発散法です。

  1. 1.しっかり眠る

    睡眠時間が不足すると、疲労が蓄積してストレスにも弱くなります。また、睡眠不足で自律神経やホルモンのバランスが乱れると、心身の不調をまねくことにもなりかねません。
    脳や体の疲れを解消してストレス耐性を高めるためにも、睡眠時間をしっかり確保して質の良い睡眠をとるようにしましょう。

    睡眠の質を高めるためには、眠るときの環境を整えることも大切です。
    枕は首や肩に負担がかかりにくいもの、敷布団やマットレスは適度な硬さがあるもの、掛布団はフィット感が良いものを選ぶと、体への負担が少なくなって快眠できる可能性が高まります。
    室温は、夏季で26~28度、冬季で18~23度程度が理想です。湿度は、夏・冬ともに50%程度となるように調節しましょう。

    なお、寝る前の飲酒・スマートフォンなどの使用は、睡眠の質の低下をまねくため厳禁です。 覚醒作用のあるカフェインを含むコーヒーや緑茶、チョコレートなども、寝る前に摂るのは避けましょう。

  2. 2.気を使わない人と楽しく過ごしたり、一人でのんびり過ごす

    休日に気を使わない親しい友人や家族とのんびり過ごすのも、ストレス解消にはおすすめです。
    気の置けない親しい人と過ごす時間は楽しいものです。一緒にいるだけで気持ちが穏やかになり、ストレスが発散されます。 日頃の悩みを相談して、気持ちを整理するのもよいでしょう。 多角的な意見を聞くことで、ストレスに対する考え方が変わることもあります。 たとえ解決法が見つからなくても、話すだけで気持ちが楽になり、ストレスが軽減されるでしょう。

    また、人と会いたくないなと感じる日は、一人でのんびり気ままに過ごすこともお勧めです。
    気ままに散歩やショッピングなどを楽しんだり、 好きなドラマや映画を見たり、音楽を聴くなど、時間に追われずに自由にゆったりと過ごしてみましょう。
    特に「笑う」と副交感神経が優位になりストレス発散効果が高まります。
    お好みのコメディー系の映画や動画を見て笑ったり、愛らしい動物や子供、キャラクターの写真や動画などを見てホッコリすると、より気分がほぐれやすくなるでしょう。

  3. 3.趣味に没頭する

    時間に余裕があるときは、趣味など好きなことに没頭するのもおすすめです。

    本を読む・音楽を聴く・映画を見る・ゲームをする・絵を描くなど、自分の好きなことに夢中になると、日々のストレスから離れられます。無理をする必要はないので、自分に合う方法でストレスを発散するようにしましょう。

    好きなことに没頭してストレスが軽減されると、仕事などにも意欲的に取り組めるようになります。ストレスをため過ぎないためにも、「オン」と「オフ」を上手に切り替えるようにしましょう。

  4. 4.湯船につかる

    普段はシャワーのみで入浴を済まされている方も、いつもより少し時間があるときは、湯船にゆっくりつかるようにしましょう。

    湯船につかると、血行が良くなるため疲労回復に効果的です。また、浮力で体の緊張がほぐれるため、身も心もリラックスしやすくなります。 38~40度くらいの湯船につかる、あるいは半身浴をするなどして、心と体をストレスから解放しましょう。

    また、湯船につかるのは、寝つきが良くなるという点でもおすすめです。
    38度くらいのぬるめのお湯の場合は25~30分程度、42度くらいのお湯の場合は5分程度つかると寝つきが良くなります。半身浴の場合は、約40度のお湯に30分程度つかるようにしましょう。

    ただし、寝る直前の入浴はかえって寝つきが悪くなるおそれがあります。眠りを妨げないために、就寝の2~3時間前に入浴するようにしましょう。

【注意!】やってはいけないストレス解消法

ストレスを解消する方法はいろいろありますが、なかには「やってはいけないストレス解消法」もあります。

例えば、飲み過ぎや食べ過ぎ、過度の喫煙は、健康を害するおそれがあるため避けなければなりません。特に過度の飲酒や喫煙は依存をまねくリスクが高いため、要注意です。

「寝だめ」をするのもおすすめできません。しっかり眠るのは良いことですが、昼近くまで寝る・何時間も昼寝をするなどして生活のリズムが乱れると、かえってストレスがたまりやすくなります。

また、過度の買い物やギャンブルもNGです。一時的にはストレスの解消になるかもしれませんが、依存や金銭トラブルなど新たなストレスを生み出すことにもなりかねません 。

日常生活に支障をきたすほどストレスがたまっているときは……

心身の健康を維持するためには、ストレスをため過ぎないことが大切です。

しかし、気分が落ちこんでストレスを発散する気力すらない場合や、日常生活に支障が出るほどストレスがたまっている場合などは、早めに心療内科などを受診しましょう。

勤務先に産業医が在籍している場合は、産業医に相談するのもおすすめです。また、公的機関が開設している相談窓口を利用するのもよいでしょう。

大切なのは「無理をしないこと」です。ストレスがつらい場合は早めに専門家に相談して、適切なケアを受けるようにしましょう。

まとめ

ストレスの原因は多岐にわたります。また、ちょっとした出来事がきっかけで、ストレスを強く感じる場合も少なくありません。しかし、ストレスを放置すると、心や体、行動にも悪影響がおよびます。病気や重大な事故などを防ぐためにも、こまめにストレスを発散するように心がけましょう。

また、オフィスなどでは、軽く体を動かしたり深呼吸したりするだけでもストレス発散になります。適量の甘いもの、ガム、好みのストレス解消グッズなどを机に常備しておくのもおすすめです。そして、しっかり睡眠をとれるように時間を確保して、心と体をストレスから解放しましょう。好きなことに没頭するなど、自分のためだけに時間を使うのもストレス解消になります。

しっかり休養してさまざまなストレス発散法を試しても心身の不調が続く場合は、早めに医療機関を受診してください。適切なケアで、心と体の健康を維持しましょう。

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