のど風邪を長引かせないために!
症状チェックから治し方・薬の選び方まで
監修:菊池 大和
医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長
「のどがイガイガする」「なんとなくのどが痛い気がする」そんな症状が出始めたとき、「のど風邪かな?」と思いながらも、そのままにしてしまう方も多いのではないでしょうか。
のど風邪は、早めに正しくケアをすれば、症状を和らげながら回復へ向かうことができます。
この記事では、のど風邪で生じやすい症状、改善がみられるまでの期間の目安、自宅で取り組めるケア、市販薬の選び方、病院に行くべきタイミングなどを紹介します。
のど風邪は、のどに炎症が起きてさまざまな症状が現れる風邪
「のど風邪」は、医学的な正式名称ではありません。鼻からのどにかけて症状が現れる風邪(急性上気道炎)の総称として使われることが多い言葉です。
急性上気道炎は、炎症の出る部位により「急性咽頭炎」「急性喉頭炎」などと呼ばれることもあります。
一般的な「風邪」では、のど・鼻・気管支など複数箇所に症状が出ることがめずらしくありません。
一方、のど風邪ではのどの症状が強く現れます。のどの奥にある咽頭に炎症が起こり、唾を飲み込むのもつらいほどの痛みが生じることもあります。
のど風邪が流行しやすいのは、空気が冷えて乾燥する秋から冬にかけてです。
ただし、エアコンによる乾燥や寒暖差がある環境では、季節に関係なく起こる可能性があります。
「これってのど風邪?」と思ったら、まずこの症状で確かめてみよう
のど風邪かどうかは、代表的な症状を一つずつ確認してみると判断しやすくなります。
特徴的な症状や、似た病気との見分け方を見ていきましょう。
のど風邪で特に多い症状
のど風邪で多いのは、強いのどの痛みです。症状がひどいと、食べ物や唾を飲み込むときにつらさを感じることもあります。
声のかすれや痰のからみ、38℃を超えない程度の発熱なども出やすい症状です。のどと耳は神経でつながっているため、耳の痛みを感じることもあります。
そのほか、鼻水や咳をともなう場合もあります。
強い痛みが出る前に、のどの乾燥やイガイガとした異物感を覚えるケースも少なくありません。
幼いお子さんの場合、飲み込む際の痛みで食事を嫌がったり、よだれが増えたりすることもあります。
普通の風邪やインフルエンザとの見分け方のポイント
一般的な風邪は、鼻とのどに同時に症状が出やすい傾向があります。
一方でインフルエンザは、38℃を超える高熱や強い倦怠感、関節痛・筋肉痛などの全身症状が突然現れるのが特徴です。
また、風邪は比較的ゆるやかに進行するのに対し、インフルエンザは経過が早く、症状が急激に強くなる点で違いがあります。
これに対して、のど風邪は熱が出ても微熱程度にとどまり、「のどの症状が特に目立つ」タイプといえます。
「コロナかも」と心配なときは検査を
新型コロナウイルス感染症も、のどの痛みや発熱、咳など、のど風邪とよく似た症状が出ることがあります。
しかし、症状の現れ方だけで正確に見分けるのは難しいので、心配な場合は検査を受けるとよいでしょう。
なお、市販の抗原検査キットは手軽で便利ですが、厚生労働省の承認を受けていない製品もあります。気になる症状があるときは、検査結果にかかわらず医療機関で検査・診察を受けましょう。
発熱がある場合は受診前に連絡して、医療機関の指示にしたがいましょう。
のどだけが痛くなるのには、ちゃんとした理由がある
のどの痛みが強く出る背景には、ウイルスなどの異物に対して体が防御反応を起こすしくみがあります。
炎症が起こるメカニズムと、のど風邪が起きやすい状況を詳しく見ていきます。
ウイルスがのどで炎症を引き起こすしくみ
のどは吸い込んだ外気が直接触れる場所なので、ウイルスや細菌、ほこり、煙、花粉などの侵入の予防につながるしくみが備わっています。
しかし、のどが乾燥すると防御機能が弱まり、ウイルスや細菌に感染するリスクが高くなります。
ウイルスなどに感染すると、細胞が傷付いたり、異物を排除しようと免疫が反応したりする結果、炎症が発生します。この炎症こそが、のどの腫れや痛みの正体です。
また、タバコの煙や花粉、ほこりなどによる刺激が続いたり、強いお酒や香辛料で刺激を受けたりする場合も、のどの炎症をまねくことがあります。
のど風邪が起きやすい状況・タイミング
空気の乾燥や寒暖差、疲れ、睡眠不足などで免疫力が落ちるとウイルスや細菌に感染しやすくなり、のど風邪をひきやすくなります。
また、鼻づまりなどで口呼吸が続くと、唾の分泌量が減ってのどの粘膜が乾燥しやすくなります。したがって、口呼吸になりやすい環境も、のど風邪のリスクを高める要因の一つといえるでしょう。
のど風邪は何日で改善が期待できる?回復の見通しがわかれば気がラクになる
のど風邪をひいたあと、いつ頃から症状が軽くなるのかは気になるところです。
発症から回復までの一般的な経過と、症状を長引かせやすい過ごし方を確認しておきましょう。
発症から回復までの一般的な流れ
のどの痛みは、発症から2~3日目にピークを迎え、その後は徐々に和らいでいくのが一般的な経過です。
全体としては、1週間~10日程度で症状が落ち着くことが多いとされています。
重症例や特殊な咽頭炎などの特別な場合を除き、2週間以上症状が続くことはほとんどありません。
なお、咳はほかの症状が落ち着いたあとも比較的長く残りやすく、2~3週間ほど続くケースもあります。
こんな過ごし方が「長引き」をまねく
休養不足や過度な運動、睡眠不足、栄養不足、喫煙、アルコールや辛い食べ物によるのどへの刺激などは、のど風邪の回復を遅らせる原因になります。
また、室内が乾燥していると、のどの粘膜の回復が遅れやすくなるため注意が必要です。
炎症を放置すると、ウイルス感染から細菌感染へと移行し、急性気管支炎や急性副鼻腔炎、肺炎などにつながることもあります。
咳や息苦しさをともなう場合は、気管支喘息などのアレルギー性疾患が隠れていることもあるので、「そのうち良くなるだろう」と放置しすぎないことも大切です。
のど風邪を早く治したい!まずこれだけやってほしい3つのこと
のど風邪の回復を促すために、日常生活で意識したいポイントがいくつかあります。すぐに実践できる3つのセルフケアを紹介します。
体を休めることが何より優先
免疫がウイルスと戦うには、多くのエネルギーが必要です。
したがって、症状の改善には「まず休む」ことが欠かせません。無理をして動き続けると症状の長期化をまねきかねないため、体調がすぐれないと感じたらしっかりと休養をとりましょう。
のどを守る水分補給と加湿のコツ
こまめな水分補給は、のどの乾燥予防につながる欠かせない習慣です。
のどの粘膜が乾燥すると、異物を排出する役割を持つ「繊毛(せんもう)」の働きが弱まります。回復を促すためにも、のどの潤いを保つことは重要です。
室内の湿度は50~60%程度が理想です。加湿器を使用するほか、濡れタオルを干すなどの方法も効果的です。
のど風邪のときに選びたい食事・避けたい食事
温かいスープやおかゆ、ゼリーなど、刺激が少なく消化しやすい食べ物を選ぶと、のどへの負担を軽減できます。
反対に、アルコール類や辛い食べ物、炭酸飲料はのどを直接刺激するので、症状が落ち着くまでは避けるのが賢明です。
関連記事:つらいのどの痛みにおすすめの食べ物は?食べ物選びと食事のポイント
のどの痛みに有効な3つの成分とそれぞれの役割
市販薬を選ぶ際は、配合されている成分の役割を知っておくと安心です。
のど風邪の痛みには、異なる経路からアプローチする以下の3つの成分が頻繁に使われます。
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- トラネキサム酸
アセトアミノフェンは、脳に直接働きかけて痛みや熱を和らげる成分です。
イブプロフェンは、痛みや熱の原因物質「プロスタグランジン」が作られるのを抑え、痛みを緩和します。
トラネキサム酸は、炎症を起こす物質の産生を促す「プラスミン」が過剰に作られるのを抑え、のどの炎症そのものを鎮めます。
痛みや腫れを根本から改善するには、原因となっている炎症を抑えることが重要です。放っておくと炎症が広がって症状が悪化する場合もあるので、早めの対処が大切です。
市販薬は、病院に行く時間がないときや症状がひどくなる前のセルフケアとして活用しましょう。
「のどの痛み」といっても、飲み込むときに強く痛む場合、むずむずとした違和感が続く場合、声がかれる場合などさまざまな症状があります。
症状(強い痛みなのか、腫れが中心なのか、など)に合わせて、効果が期待できる成分を配合した製品を選ぶとよいでしょう。
「ただの風邪」と油断していたら危険なことも?病院に行くべきサイン
のど風邪の多くは自然に回復しますが、なかには医療機関の受診が必要になるケースもあります。
受診の目安や、のど風邪と間違えやすい病気を押さえておきましょう。
こんな症状が出たら早めに医療機関へ
のどの痛みがひどくて食事や水分を摂れない、5日以上経っても改善しない、38℃以上の高熱が続く、息苦しさを感じる、といった症状は早めに受診すべきサインです。
また、市販薬を服用しても症状が改善しない場合も、受診を検討しましょう。
のど風邪と間違えやすい「別の病気」の可能性
溶連菌感染症(細菌性で抗生物質による治療が必要)、扁桃炎、インフルエンザなどは、のど風邪とよく似た症状が出ますが、対処法はまったく異なります。
特に溶連菌感染症は、放置するとリウマチ熱などの合併症を引き起こす場合があるため、注意しなければなりません。
自己判断で済ませず、症状が強い場合や長引く場合は医療機関を受診しましょう。
のど風邪を繰り返さないために、今日から始めてほしい予防習慣
のど風邪にかからないようにするには、日々の生活習慣を見直すのが効果的です。
今日から取り組める予防習慣を紹介します。
感染の予防につなげるための日常的な3つの習慣
帰宅後の手洗い・うがい、室内の適切な加湿(50~60%が目安)、そして外出時のマスク着用は、いずれも基本でありながら高い効果が期待できる予防策です。
特に空気が乾燥する秋冬や、寒暖差の大きい季節の変わり目には、意識して取り入れることをおすすめします。
のどを守る生活習慣の見直し
規則正しい睡眠と栄養バランスの良い食事は、免疫力を維持する土台になります。
一方、声の使いすぎや過度な飲酒、喫煙はのどの粘膜を傷める原因になるため、できるだけ控えましょう。
のど風邪に関するよくある質問3選
最後に、のど風邪に関するよくある疑問にお答えします。
Q.のど風邪は家族や周囲の人にうつりますか?
A.のど風邪は、おもに咳やくしゃみによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染でうつります。
発症後3日間ほどは特に感染力が高いとされているので、症状が出始めてしばらくの間はマスクの着用や手洗いを徹底し、タオルの共有を避けるなどの対策をしましょう。
Q.のど風邪のとき、お風呂に入っても大丈夫ですか?
A.38℃以上の高熱や脱水、ひどい倦怠感などがなければ、入浴しても問題ないとされています。
ただし、ぬるめのお湯で短時間にとどめ、湯冷めをしないよう気を付けましょう。
無理をせず、そのときの体調と相談しながら判断することが大切です。
Q.のど風邪のとき、何科を受診すればいいですか?
A.内科・耳鼻咽喉科のどちらでもかまいません。
のどの痛みがおもな症状であれば、のどの状態を直接診察・処置できる耳鼻咽喉科が適しています。
高熱や全身の倦怠感など全身症状が強い場合は、内科のほうが向いているでしょう。
まとめ:のど風邪はひきはじめの正しいケアが回復への近道
のど風邪は、のどの奥に炎症が起きるタイプの風邪です。発症から2~3日目にかけて症状がひどくなり、通常は1週間~10日程度で回復に向かいます。
回復を早めるには、十分な睡眠、こまめな水分補給、適度な加湿、そして刺激の少ない食事を心がけることが大切です。
市販薬を活用する際は、痛みだけでなく炎症そのものにアプローチできる成分が入っているかもチェックしましょう。
のどの痛みが出始めてから5日以上経っても改善しない、高熱が続く、食事や水分を摂れないなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
長引かせないためにも、適切なケアを心がけましょう。小さな対応の積み重ねが、その後の回復スピードを大きく左右します。
【この記事の監修者】
<名前>
菊池 大和(きくち やまと)
<資格>
日本慢性期医療協会総合診療認定医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/身体障害者福祉法指定医(呼吸器)/厚生労働省初期臨床研修指導医/神奈川県難病指定医 など
<プロフィール>
医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長。地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、活動が評価され2024年11月にTIMEアジア版に掲載される。