ジキニン情報局 知っておきたいかぜ学

かぜには様々な症状や原因があります。
身近な病気だからこそ、よく理解しておけば、
いざというときの対処に役立つはずです。
知っているようで知らない、“かぜ”を学びましょう。

岡部信彦先生
監修:岡部 信彦 先生
川崎市健康安全研究所 参与

かぜの正体

「かぜ」とは医学的には「かぜ症候群」といい、くしゃみや鼻水、せき、のどの痛みなど呼吸器に現れる症状をまとめた病気です。症状の程度は様々ですが、自然に治ることが一般的です。

それではなぜ「かぜは万病のもと」といわれるのでしょうか。「かぜは万病のもと」とは、かぜを軽く見て放置すると、様々な病気に繋がる可能性があるという意味です。かぜ自体は一見すると軽い病気のように思えますが、体力や免疫力が低下しているときにかかると、ほかの病気を引き起こすきっかけになることがあります。つまり、ほかの病気の始まりだったということもあるので、「ただのかぜ」と油断せず体の変化に注意を向けましょうという警告の意味も込められているのです。

かぜの症状

かぜをひいたときによく見られる症状を以下にまとめました。

部位 症状
全身 発熱・悪寒
頭痛
鼻水・鼻づまり・くしゃみ
のど せき・たん・のどの痛み
おなか 嘔吐・下痢・腹痛

通常、かぜの症状はウイルスに感染してから、1日から3日ほどで現れ始めます。その多くは数日から1週間程度で自然と回復に向かいますが、もし症状が長引くようであれば、別の病気であることや細菌の二次感染などによる合併症の可能性が考えられます。

知っておきたいPOINT1かぜの主な原因はウイルス

かぜの原因で圧倒的に多いのは、ウイルスです。ウイルスの種類によっては流行しやすい時期があり、季節によって原因となるウイルスに違いが見られることがあります。

また、かぜがきっかけで、中耳炎や副鼻腔炎、肺炎、髄膜炎、脳炎などの重い合併症を起こすこともあるため、症状の変化には注意が必要です。なお、新型コロナウイルスによる感染症の流行後は、季節性があまり明確ではなくなってきています。

かぜの原因となる主なウイルスと症状

流行時期 ウイルス名(カッコ内は主な感染症) 主な症状
春・秋 ライノウイルス せき・のどの痛み・鼻水・鼻づまりなど
アデノウイルス(咽頭結膜熱) 発熱・のどの痛み・目の充血
エンテロウイルス (ヘルパンギーナ) のどの痛み・発熱
(手足口病) 発疹・発熱
コロナウイルス 鼻水・鼻づまり・せき・発熱など
RSウイルス せき・発熱
インフルエンザウイルス 悪寒・高熱・関節痛・筋肉痛
ノロウイルス(感染性胃腸炎) 下痢・嘔吐・腹痛・脱水
ロタウイルス(感染症胃腸炎)
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※新生児・乳幼児・高齢者・重症化リスクが高いと医師が判断する人(基礎疾患を持つ人)などは肺炎や気管支炎に注意が必要

知っておきたいPOINT2 感染性胃腸炎は脱水と感染の
広がりに注意

かぜには、いわゆる「おなかのかぜ」といわれる感染性胃腸炎があります。ここでは感染性胃腸炎の原因や症状、かかった際に注意すべきことを解説します。

感染性胃腸炎の原因と症状

主な原因となるのは、ノロウイルスやロタウイルスです。嘔吐・下痢といった症状が中心で、発熱や腹痛、脱水症状などをともなうこともあります。

感染性胃腸炎にかかってしまったら、注意すること

感染性胃腸炎にかかってしまったときに気を付けたいのが、嘔吐や下痢によって体の水分が失われる「脱水症状」です。脱水症状を防ぐためにも、こまめな水分補給を心がけましょう。水だけでなく、失われた電解質を補えるスポーツドリンク(症状が軽い場合)や経口補水液を飲むのもおすすめです。

脱水症状があると、かぜの症状がさらに悪化することもあるため、意識的な水分摂取が大切です。また、感染を広げないためにも、ウイルスがたくさん含まれている嘔吐物や下痢便には直接触れず処理をし、その場所の消毒をした後で、丁寧な手洗いと手指の消毒を行ないましょう。

知っておきたいPOINT3 インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の
重症化に要注意

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は、老若男女問わずかかる可能性のある感染症です。ここでは、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の症状や、ワクチンを接種する必要性について解説します。

かぜとインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の症状の違い

インフルエンザはインフルエンザウイルスによって起こる病気、新型コロナウイルス感染症は新型コロナウイルスによって起こる病気で、軽い症状ですむかぜとは違い、重いあるいは強い症状となりがちです(以下、表参照)。

高齢者のなかには、急に高熱が出たり関節が痛んだりといった典型的な症状が現れず、何となく体調が悪い状態が続くこともあるため注意が必要です。こうした症状が長引く場合は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症だけでなく、肺炎や結核などほかの病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

かぜとインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の症状の違い

かぜ インフルエンザ 新型コロナウイルス感染症
症状の
出始める
場所
局所(鼻・のど) 全身 全身
進み方 ゆるやか 急激 ゆるやかだが、急激に重症化する場合あり
発熱 37〜38℃未満の熱 38℃以上の高熱 37.5℃以上が3〜5日以上続くことが多い
主な体調
の変化
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、
のどの痛みなど
足腰や関節に強い痛み・悪寒など 咽頭痛、咳、頭痛、倦怠感、筋肉痛、味覚・嗅覚障害など
治るまで 一定ではない 7〜10日くらい
(発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで学校の出席は停止)
1週間程度
(発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで学校の出席は停止)
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※インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は症状が類似していることが多く、症状からの鑑別は難しい
※出典:「かぜと新型インフルエンザの基礎知識」
(岡部信彦著、少年写真新聞社)より一部改変

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