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ストレス研究室

不眠症とは?
4つの夜間症状と5つの不眠の原因、対策法を解説

「興奮や不安でなかなか寝付けない」「なぜか朝早く起きてしまった」といった経験は、多かれ少なかれ誰にでもあるでしょう。しかし、十分に眠れない状態が長期間続き、心身に不調が生じている場合は「不眠症」かもしれません。
この記事では、不眠症の定義と4つのパターン、不眠の原因となりうる5つの要因を解説します。不眠の予防につながる対処法も紹介しますので、不眠に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

奥田弘美先生

監修:白濱龍太郎先生
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

不眠症とは?

最初に、不眠症の定義や日本における不眠症の実態を知っておきましょう。

不眠症の定義と睡眠時間

不眠症は、寝付きが悪い・眠りが浅く何度も目覚める・早朝に目覚めてしまうなどの睡眠問題を抱え、日中に心や体の不調があらわれる病気です。

一過性の不眠は、決して珍しいものではありません。

例えば、大事な試験やプレゼンテーションの前日に緊張で眠れない時や、出張や旅行先などいつもと違う環境で眠れなくなる夜など、不安やストレスで一時的に眠れなくなるのは誰にでもあることです。通常、このような不眠体験は数日~数週間で収まり、その後はまた問題なく眠れるようになります。

しかし、夜間の不眠が続き、日中に心身の不調があらわれて生活の質が低下している場合は不眠症かもしれません。特に、週に3日以上の不眠による不調が3ヵ月以上続いている場合は「慢性不眠症」が疑われます。

もっとも、睡眠時間が短い場合、眠りが浅い場合、あるいは夜間の覚醒回数が多い場合でも、日中の生活に支障がなければ不眠症とはいえません。実際、睡眠時間が3~4時間程度で眠りが浅いと感じている人であっても、日中に不調があらわれなければ不眠症と診断されることはありません。

つまり、不眠症とは睡眠時間によって定義される病気ではなく、継続的な不眠によって心身の不調、ひいては生活の質の低下を招くことで初めて診断される病気といえます。

日本における不眠症の割合

それでは、日本で不眠症に悩んでいる人はどれくらいいるのでしょうか。

「国民健康・栄養調査」によると、約10%~30%の人が週3回以上、寝付きの悪さや睡眠途中の覚醒、早朝の覚醒や睡眠時間の不足、睡眠の質への不満を感じています。また、男女とも30%を超える人が日中の眠気に悩まされています。

抱えている問題の種類や発現率は年齢層によって多少ばらつきがありますが、若い世代では睡眠時間や睡眠の質に対する不満が多く、年齢とともに睡眠途中の覚醒や早朝の覚醒に悩む人が増える傾向があります。

※厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要

不眠症は大きく4つのパターンに分けられる

不眠症には、「寝付きが悪い」「夜中に何度も起きてしまう」など、さまざまな症状がありますが、大きく以下4つのパターンに分けられます。
・入眠障害
・中途覚醒
・早朝覚醒
・熟眠障害

・入眠障害
寝付きが悪いタイプ。寝ようとしても長時間眠りにつけない。入眠までに1時間以上かかる場合は、入眠障害の疑いがある。

・中途覚醒
睡眠の途中で目が覚めてしまうタイプ。眠りが浅く何度も目が覚めてしまい、それ以降寝付くことができない。

・早朝覚醒
予定より早い時間に目が覚めてしまうタイプ。早朝に目覚め、そのあと眠ることができない。

・熟眠障害
ぐっすり眠った感じが得られないタイプ。熟睡したという満足感が得られず、睡眠不足を感じる。眠りが浅かったり睡眠の中断があったりすると、生じやすい。

上記の症状に加え、日中の不調や日常生活への支障などが見られるようになると、「不眠症」と診断される可能性が高いといえます。これらの症状は単独で生じるとは限らず、複数の症状が同時にあらわれることもあります。

不眠症における5つの原因とおもな症状

不眠症の原因は多数ありますが、一般的に以下5つの要因のいずれかに分類されます。

生理的な要因(Physiological)

生活習慣や睡眠環境などが原因で睡眠リズムが乱れ、不眠が生じるケースです。例としては、夜間勤務があって昼夜逆転の生活を送っている場合などが挙げられます。また、寝具が体に合っていない、室温・静かさ・明るさなどの睡眠環境が整っていない場合も睡眠リズムが乱れやすくなります。

心理的な要因(Psychological)

不安や心配などからくる強いストレスや緊張が原因で、不眠の症状があらわれるケースです。例えば、仕事のトラブルや対人関係の悩み、親しい人の死などで眠れなくなるのは、不眠につながる心理的な要因があるからです。特に、几帳面で真面目な性格の人はストレスを強く感じやすく、不眠症になるリスクが高いといわれています。

薬理学的な要因(Pharmacological)

医薬品や嗜好品などの影響で、睡眠が妨げられるケースです。

睡眠に影響する薬剤は多岐にわたり、代表的なものとしては降圧剤や甲状腺製剤、抗がん剤のほか、ステロイドやパーキンソン病治療薬、インターフェロンなどが挙げられます。その他、市販の花粉症薬又はアレルギー薬などに配合されている抗ヒスタミン薬は、日中に眠気の副作用が生じることがあるため、夜間の睡眠に影響するおそれがあります。

タバコに含まれるニコチン、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインには覚醒作用があるため、睡眠に悪影響を与える薬理学的な要因の一つです。また、過度なアルコールの摂取も、睡眠の質と量を損なう要因であるとされています。

これらのカフェインやアルコールには利尿作用があるため、寝る前に摂取するとトイレのために目が覚める回数が増えるのも、睡眠を妨げる理由です。

身体的な要因(Physical)

身体的な要因は、病気や体の不調で不眠が生じるケースです。

ケガや関節リウマチで生じる痛み、アレルギー疾患にともなうかゆみ、咳や喘息による息苦しさで寝付けない場合などが該当します。また、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、睡眠にともなって症状があらわれる病気で眠りが妨げられる場合もあります。その他、前立腺肥大による頻尿も、睡眠を妨げる身体的な要因の一つです。

さらに、特別な病気がなくても、体の変化にともない不眠があらわれる場合もあります。
例えば更年期になると、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れで、ほてりやのぼせ、寝汗などに悩まされることが少なくありません。このような不快な症状が原因で、不眠の症状があらわれることもあります。

精神医学的な要因(Psychiatric)

心の病気が原因で不眠があらわれるケースです。

例えば、うつ病や統合失調症、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害(不安神経症)といった心の病気があると、不眠や過眠(眠気)の症状があらわれることがあります。

うつ病患者の約80%~85%に不眠が認められ、その症状は、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害など多岐にわたるとされています。なお、うつ病患者の約10%~15%には過眠が見られるともいわれています。

「単なる不眠と思っていたら、実はうつ病だった」というケースも稀ではありません。

精神医学的な要因で眠りが妨げられている場合は、不眠や過眠の症状だけではなく、気分の落ち込みや意欲の減退、趣味に対する興味の喪失なども見られます。このような場合は早めに病院に行き、適切な治療を受けるようにしましょう

不眠を予防するにはどうしたら良い?

最後に、不眠を予防する方法や心地良い眠りを得るための対策をいくつか紹介します。

適度な運動を心がける

国内外の研究により、運動習慣のある人は不眠が少ないことが明らかになっています。運動習慣がない人は、適度な運動を心がけてみてください。

運動は不定期に行なうのではなく、習慣として続けると、寝付きが良くなり深い眠りが得られるようになるとされています。ただし、激しい運動はかえって睡眠を妨げるおそれがあるため、早歩きや軽いランニングなどの有酸素運動がおすすめです。

また、不眠予防のためには、寝る3時間ほど前の運動が効果的とされていますが、寝る直前の運動は体を興奮させてしまうため避けてください。

睡眠前に心身の緊張をほぐす

寝る前に心や体の緊張をほぐしてリラックスすることも、不眠予防に効果的です。

リラックスする方法は何でも構いません。好きな音楽を聴く・読書をするといった方法でもよいでしょう。寝る前に心身の緊張がほぐれて副交感神経が優位になれば、より良い質の睡眠につながります。

心身の緊張をほぐす方法としては、半身浴もおすすめです。半身浴は心臓にかかる負担が少なく、副交感神経を優位にさせる効果も期待できます。

寝酒をしない

前述のとおり、アルコールは睡眠の質の低下を招くとされています。飲酒すると一時的に寝付きが良くなることもありますが、その効果は長く続かず、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドの覚醒作用で眠りが浅くなります。

また、アルコールには利尿作用があるため、トイレのために睡眠が中断されることも多くなるでしょう。さらに、アルコールを摂取すると筋肉の緊張がゆるんでいびきをかきやすくなるため、睡眠時無呼吸症の悪化の原因になることもあります。

このように、寝る前の飲酒は睡眠の質も量も損なうため、不眠対策として寝酒をするのはおすすめできません。飲酒は生活習慣病やうつ病などのリスク要因でもあるため、寝る前の飲酒を習慣にしている人はすぐにやめるようにしましょう。

朝起きたら太陽光を浴びる

朝起きてすぐに太陽の光を浴びることも、不眠対策には有効です。

人間の体内時計の周期は24時間より少し長めになっているため、毎日リセットしないと少しずつ生活パターンがずれ、寝る時間が遅くなってきます。朝の光には体内時計をリセットする作用があるため、起きてすぐに光を浴びると自然に早く寝付けるようになります。

したがって、不眠対策としては「早寝早起き」を心がけるよりも、「早く起きて太陽の光を浴び、早めの睡眠につなげる」ことを意識するとよいでしょう。

心地良い寝室づくりをする

心地良い眠りのために、寝室の環境を整えることも大切です。

枕は体型に合う高さのもの、敷布団やマットレスは体が沈みすぎない適度な硬さのもの、掛布団は吸湿性・放湿性を兼ね備えた軽くてフィット感のあるものを選びましょう。
寝るときの室温は20度前後、湿度は40%~70%程度が良いとされています。

静かな環境にするには、じゅうたんを敷く、ドアをしっかり閉めるなどもおすすめです。街灯などが窓の近くにある場合は、遮光カーテンを利用すると不眠対策になります。

なお、心地良い環境にしたとしても、寝床でダラダラと長時間過ごすのは逆効果です。無理に眠ろうとするとかえって目が覚めてしまうため、なかなか寝付けなくなります。寝付きが悪い場合は一度寝床から離れ、気分転換をして眠気が出てから寝るようにしましょう。

まとめ

不眠は、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4つに大きく分けられます。不眠が続き、心身の不調や生活の質の低下などが見られると「不眠症」と診断されます。

不眠症の原因は、生理的な要因・心理的な要因・薬理学的な要因・身体的な要因・精神医学的な要因のいずれかに分類されるのが一般的です。

不眠を予防して快適に眠るためには、適度な運動を心がけ、心身を緊張から解放することが大切です。寝る前の飲酒を避ける・朝起きたら太陽の光を浴びる・睡眠環境を整えるなども不眠の予防につながります。

不眠症は、体だけではなく心にも悪影響をおよぼすおそれがある病気です。「寝付けない」「夜中に目が覚めてしまう」などの症状がある場合は早めに対処し、心と体の健康を取り戻しましょう。

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