除菌のあれこれ
除菌のあれこれ
01
そもそも除菌とは?
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一般に「除菌」という言葉は「細菌やウイルスの数を減らす」ことを指します。
ただし、厳密には菌のみに適用される言葉なので、菌ではないウイルスに「除菌」という言葉は用いません。しかし、広く浸透している「除菌」の定義には「ウイルスの数を減らす」ことも含まれているため、このサイトでは、ウイルスも「除菌」の対象としています。
すべての菌やウイルスをゼロにはできなくても、なるべく数を減らし、身体の中に取り込まない工夫をすることが大切です。菌は時間とともに増えていくため、菌が繁殖しやすい湿度の高い場所では、とくにこまめな除菌を心がけましょう。
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02
除菌成分と菌について
除菌アイテムに含まれている除菌成分は、さまざまです。
もっとも一般的な「アルコール(エタノール)」は、ほとんどの細菌を除菌できますが、一部のウイルスには効きません(※1)。短時間で揮発するため、使用後に乾かしたり拭き取ったりする手間が要らないのはうれしいところ。ただし、濡れた場所で使うとアルコール濃度が下がってしまうので、十分な効果が得られません。また、誤って引火しないように、キッチン付近では使わないのが無難です。
アルコールでは十分に取り除けないノロウイルスやロタウイルスには、「次亜塩素酸ナトリウム」が効果的です(※2)。家庭環境に存在するさまざまな細菌にも、幅広く対応可能。食品添加物に指定されている成分を選べば、口に入るものや食材を除菌するにも安心です。
ただし、揮発するまでにやや時間がかかるため、使用後に時間を置いて乾かしたり、清潔な布で拭き取ったりする必要があります。
ウイルスが付着した衣類を除菌するには、次亜塩素酸ナトリウムの成分濃度が高い「塩素系漂白剤」も便利です。ただし、衣類の色や柄が漂白される恐れがあるため、注意が必要。また、使用にあたり十分な換気をすることが大切。他の製品を混ぜ合わせると、塩素ガスが発生して中毒症状を起こす危険性もあります。
- 全薬工業調べ
- 全薬工業調べ
「手早く使いたいときは、アルコール。ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスにも対応したり、キッチンまわりで活用したいときには、次亜塩素酸ナトリウム。ウイルスが付着した衣類の漬け置きには塩素系漂白剤など、使用場面や目的に合わせて使い分けるといいでしょう。また、それぞれの除菌製品は最適な成分濃度でつくられているため、薄めて使うことは厳禁です。また、薄めて使う塩素系漂白剤は、目的に合った適切な濃度での利用が重要です」
(阿部 章夫 教授)
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おすすめの除菌方法とは?
正しい除菌の基本は、まずしっかりと手洗いをすることです。石けんと流水でよく洗い流せば、菌やウイルスは物理的にはがれていきます。外出先から帰宅したときや調理の前後、食事前、トイレの後など、こまめに手洗いを心がけましょう。高齢者や乳幼児といった免疫力の低い人ほど、手洗いの頻度を高めるのがおすすめです。
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とくに洗い残しがちなポイントは、指と指の間や爪の中。指を組み合わせてその間をこすったり、手のひらに爪を立てるようにして、念入りに洗います。そのうえで除菌アイテムを使えば、菌やウイルスをぐっと減らすことができるでしょう。
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04
菌をおうちに持ち込まないために
感染リスクを軽減するためには、外から家の中に菌を持ち込まないことが大切です。外出先から家に菌を入れないため、やっておきたい4つのポイントをまとめました。
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1 帰ったら、まずは手洗い・うがい
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2 着ていた上着などは玄関で脱ぎ、そのまま洗濯へ。もしくは除菌スプレーをかける
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3 外で使ったバッグやスマートフォンは、除菌ウェットシートなどで優しく拭き取る
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4 玄関やリビングのドアノブなど、手洗い前に触った場所は除菌する
人ごみなどのとくに人が密集した感染リスクが高い場所に出かけたときには、玄関から浴室に直行して、そのままシャワーを浴びるのも良いでしょう。また、外出先では不特定多数の人が触るものをむやみに触らないこと。お金などをやりとりしたあとにも、手指を除菌しておくと安心です。
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05
菌をおうちで増やさないために
気をつけていても入り込み、時間とともに増殖していくのが菌やウイルス。家の中でとくに菌が増えやすく、除菌を徹底したいポイントを紹介します。
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06
プラスαの除菌ケア
頻繁に除菌をしていると、手が荒れてしまう方は少なくありません。手荒れとは、皮膚という最大のバリアが壊れている状態。どれだけ除菌をしていても、薄くなった皮膚から菌が侵入してしまいます。
乾燥や痛みを感じたら、除菌のあとにクリームやワセリンで保湿を。除菌で取り除いてしまった皮脂を、ほどよく補充してあげましょう。
プロフィール紹介
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阿部 章夫 教授
北里大学 大村智記念研究所 教授、細菌学会評議員、細菌学会関東支部 支部長。細菌の生存戦略を分子レベルで理解し、感染現象における仕組みの解明に取り組む。薬剤耐性を生じない抗感染症薬の開発にも取り組む。「もっとよくわかる!感染症」(羊土社)執筆。
「たとえば、血清型O157に代表される腸管出血性大腸菌は、繁殖しやすい条件下だと20分で約2倍に増殖します。同じく食中毒の原因となる腸炎ビブリオなら、わずか10分で約2倍に!湿度が高く、繁殖しやすい環境では、菌は爆発的に増えていくのです」
(阿部 章夫 教授)