• TOP
  • 除菌コラム
  • 水道水の消毒から食品工場の殺菌まで!?
    「次亜塩素酸ナトリウム」が身近なさまざまな場面で活用されているワケとは?

除菌コラム

水道水の消毒から食品工場の殺菌まで!?
「次亜塩素酸ナトリウム」が身近なさまざまな場面で活用されているワケとは?

除菌製品まめ知識

2021.12.10

次亜塩素酸ナトリウムは、衣料や食器の漂白などによく使われている成分ですが、哺乳瓶の除菌やまな板・クロス等の調理器具類の除菌・漂白、さらには野菜の除菌等、食品衛生の分野でも幅広く使われている優れた除菌成分です。

なぜ様々な所の除菌に「次亜塩素酸ナトリウム」が使われているのか?「次亜塩素酸ナトリウム」はなぜ優れた除菌成分と言えるのか?

長年に渡り洗浄や殺菌に関わる研究や試験に携わり、全国の食品工場において衛生管理の現場指導も実践されている、三重大学大学院 生物資源学研究科 福﨑 智司 教授に伺いました。

画像1.jpg

"水道水"の消毒に利用されている「次亜塩素酸ナトリウム」

水道水の原水となる湖水や河川には、さまざまな病原微生物が存在します。その為、水道水にもその様な病原微生物が含まれる恐れがあることから、水道法の規定により塩素による消毒が義務付けられています。そこで活用されているのが「次亜塩素酸ナトリウム」なのです。塩素消毒に使用される塩素のうち、次亜塩素酸ナトリウムは97%を占め、液化塩素(塩素ガス)を使用しているのは全体のわずか3%です。液化塩素と次亜塩素酸ナトリウムは、まとめて遊離塩素と呼ばれますが、簡略的に塩素と表記しています。
※参考:水道協会雑誌,79巻,12号,26-41 (2010)


日本では、蛇口から出る水道水の中に0.1mg/L以上の塩素が残留していることが義務づけられています。水道水中に遊離塩素が残留していることは、適切に消毒が行われていることを示しており、安全の証なのです。
※参考:東京都水道局HP

pixta_42455430_S.jpg

"プールの水"や"銭湯のお湯"の消毒に利用されている「次亜塩素酸ナトリウム」

遊泳/水泳用プールの衛生管理において、厚生労働省「遊泳用プールの衛生基準」、文部科学省「水泳プールに係る学校衛生基準」のいずれにおいても、ヒト由来の病原菌や汚れを消毒することを目的に塩素消毒が義務づけられています。その中で多く活用されているのが「次亜塩素酸ナトリウム」なのです。

また同様に、公衆浴場の衛生管理を目的とした厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」によると、浴槽水の消毒にあたり、塩素系薬剤の使用を定めており、浴槽水中の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して、通常0.4mg/L程度を保つとともに、最大1.0mg/Lを超えないよう定めています。ここで定められている塩素系薬剤として「次亜塩素酸ナトリウム」が使われています。

※参考::厚生労働省「遊泳用プールの衛生基準」
     文部科学省「水泳プールに係る学校衛生基準」
     厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」

画像2.png

"食品"の殺菌処理にも利用されている「次亜塩素酸ナトリウム」

大規模調理工場から飲食店まで、食品を扱う施設において、食中毒などを引き起こすウイルス・菌の不活化は非常に重要です。

厚生労働省による「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、食材の殺菌は十分な洗浄と加熱消毒(中心部が75℃で1分以上、二枚貝などは85℃~90℃で90秒以上)が基本ですが、加熱せずに提供される生野菜や果物、生魚などの生鮮食品の場合、流水で十分に洗浄するとともに、「次亜塩素酸ナトリウム」などによる殺菌が推奨されています。

そのほか、調理器具や容器の使用後は、十分な洗浄とともに加熱消毒(80℃以上で5分以上)や、「次亜塩素酸ナトリウム」をはじめとした塩素系消毒剤での消毒が求められています。
※参考:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」

pixta_74935121_S.jpg

なぜ「次亜塩素酸ナトリウム」が広く利用されているのか?

「次亜塩素酸」の消毒剤としての歴史は古く、約170年間にも及ぶ長い歴史があり、工業的に製品化された「次亜塩素酸ナトリウム」にはその歴史に裏打ちされた信頼感があります。また「次亜塩素酸ナトリウム」には、優れた除菌力に加え、洗浄力や脱臭効果、漂白といった非常に幅広い効果があります。これらは、エタノールには無い効果でもあります。そういったことが相まって、身近な様々な場所で使われています。

「次亜塩素酸ナトリウム」は、それぞれ推奨される使用濃度が決まっています。用途に応じて、適切な濃度で使用することが最も重要です。

なお「次亜塩素酸ナトリウム」は、多くの医療機関において、主に医療機器の消毒にも使われています。命の誕生する多くの産婦人科でも同様です。みなさんが生まれたときから触れる、非常になじみの深い除菌成分が「次亜塩素酸ナトリウム」と言えるのではないでしょうか。





【「次亜塩素酸ナトリウム」とは】
次亜塩素酸ナトリウムは、衣料や食器の漂白などによく使われている成分ですが、哺乳瓶の消毒やまな板・クロス等の調理器具類の除菌・漂白、野菜の除菌等、食品衛生の分野でも広く使われています。次亜塩素酸を含む製品には、用途の異なる多くの種類があり、注意点も異なりますので、使用するときには必ず、各製品の添付文書やラベルなどを確認の上、使用場面や目的に合わせて使い分けましょう。

<使用濃度について>
食品添加物(殺菌料)の基準を満たした次亜塩素酸ナトリウムは、食品など直接口に入れる食材への使用が出来る一方、その濃度によっては、高い作用効果から肌を傷つけてしまうことも。下記を参考に、正しい使用濃度をチェックしましょう。

・野菜の殺菌/100ppm~200ppm
・調理器具の殺菌/200ppm
・ノロウイルス対策の環境洗浄/200ppm
・嘔吐物の処理/1,000ppm

※参考:厚生労働省HP「ノロウイルスに関するQ&A」
    大量調理施設衛生管理マニュアル
    東京都健康安全研究センター「ノロウイルス対策緊急タスクフォース」最終報告書

※ppmとは
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は「ppm」という単位で表示されていることが多いです。「ppm」とは、「%」同様濃度を表す単位で、「%」が100分の1であるのに対して、「ppm」は100万分の1(parts per million)の意味です。すなわち、ppmは「mg/kg」のことであり、水の比重は1.0なので「mg/L」で表されます。

プロフィール紹介

  • 三重大学大学院 生物資源学研究科
    福﨑 智司 教授

    1991年3月 広島大学大学院醗酵工学科博士課程後期修了(工学博士)。4月 岡山県工業技術センター入所、食品技術グループ長、研究開発部長を歴任。2013年から三重大学大学院生物資源学研究科 教授。洗浄・殺菌技術の学術研究を行う傍ら、全国の食品工場において衛生管理の現場指導を実践。科学技術庁長官表彰研究功績者賞(1999年)、日本防菌防黴学会学会賞(2020年)等を受賞。著書に「次亜塩素酸の科学 ―基礎と応用―」(2012, 米田出版)、「次亜塩素酸の基礎と利用技術」(2021, 幸書房)がある。