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抑肝散について

小児の夜なき

抑肝散の本来の使い方がこれらの症状でしたが、次第に応用範囲が広がり、現在では抑肝散は認知症やイライラ、不眠などの薬という認識が主になってしまいました。
しかし当然ですが、本来の使い方でも有効です。小児の不眠で乳児期は甘麦大棗湯を用い、学童期からは抑肝散を用いるのが一般的です。不眠だけでなく、夜なきにも有効なことが多いものです。
小児の治療は、半分以上が親の治療だと言われることがあるくらいに、親に対する説得や説明が重要です。現代医学では、親と子供とを一緒に治療することは希有ですが、漢方治療では頻繁に行われております。原典にありますように「子母同服」というのが漢方治療では行うことができ、有効なことをしばしば経験します。明時代に親と一緒の治療という発想があったこと自体が驚きですが、現在でも同様なことが言え、同じ処方を使うことができるというのはとても興味深いことです。

以上のように抑肝散は広範囲に用いることができる処方ですが、精神的な緊張が強く、切羽詰まったような状態や、眉間にしわを寄せて見るからにイライラしているような方には抑肝散が有効なこともあります。
また、抑肝散の副作用としては、体が虚弱な方では、全身倦怠感、怠さ、眠気の訴えをされることがあります。この場合は一旦中止し、少量にしてみるか、人参剤などを用いる方がよいことがあります。

執筆者ご紹介
杵渕 彰( きね ぶち あきら )  先生
1972年、岩手医科大学卒。東京都立松沢病院(都立広尾病院兼務)、東村山福祉園、柏木診療所、(財)日本漢方医学研究所所属日中友好会館クリニック所長などを経て、2001年4月に青山杵渕クリニック開設。日本東洋医学会専門医。日本精神神経学会専門医。日本医師会認定産業医。著書に『こころに効く漢方』『100歳まで元気にすごす漢方読本』など。